会社の契約、社長名義で大丈夫?
問題の所在
代表取締役たる社長の名義で契約が有効に成立するかが問題となります。
結論
社長名義の契約でも有効に成立します。
根拠
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
会社法349条第4項
解説
「株式会社の業務に関する一切の~裁判外の行為」とは、裁判での行為を除く法律行為や事実行為の全てを指します。
従って、会社の法律行為たる契約締結は社長の権限内の行為であり、社長名義であっても契約は有効に成立します。
補足
本記事では、社長=「代表」取締役という前提を置いています。「代表」の付かない取締役名義での契約締結についてお調べの方はご注意ください。
というのも取締役には「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」この条文が適用されません。従って自然状態では取締役に契約締結権限はないため、厳密には取締役名義の契約は無効になってしまいます。
代表権のない取締役名義で契約を締結する場合には、別途社内で契約締結権限の付与を確認しましょう。
権限の所在を不明瞭にすることは法務リスクです。
過去には、背信的な取締役が自身に権限がないことを知りながら外部との契約に署名捺印してしまい、会社がその契約の無効を主張したものの、裁判所は表見取締役の成立を認め当該契約を有効とした判例があります。会社の望まなかった契約が有効と判事されたのです。
足元を掬われることのないよう、特に新しい取引の際は契約締結の権限の所在を社内で明確にしましょう。